日本人類遺伝学会第68回大会(会期:2023年10月11日(水)~14日(土)) において、ランチョンセミナーを共催致します。
ぜひご参加の際は、セミナーへのご参加をお待ちしております。
会場:都市センターホテル(東京都千代田区)
10月12日(木) 12:00-12:50
ランチョンセミナー2 Room B (都市センターホテル 5F オリオン ※現地開催のみ)
ロングリードRNAシークエンスIso-Seqを用いた
ヒトの脳の部位間でのトランスクリプトームの比較
演者:嶋多 美穂子 先生(国立国際医療研究センター 臨床研究センター)
座長:荻 朋男 先生(名古屋大学 環境医学研究所 発生遺伝分野)
要旨:
PacBio社のSequel IIを用いたIso-Seq法は、長く正確なHiFiリードを使用し、多くの遺伝子転写産物に対して全長を解析することが可能である。この方法により、様々なスプライシングバリアントや融合遺伝子などを精度高く検出することができ、トランスクリプトーム研究に新たな進展をもたらしている。私たちは新潟大学脳研究所の共同利用のプログラムのもと提供していただいたヒトの3か所の脳部位(小脳、側頭葉皮質、視床下部)のサンプルを用いたIso-Seqを実施した。その結果、ナンセンス変異依存mRNA分解機構などを考慮した厳格なフィルタリング、複数サンプルの複数の部位で発現しているといった条件を加えても、検出されたアイソフォームの半数以上が新規であることが分かった。また、特に脳部位間で発現量自体は同等でも、異なる主要なアイソフォームを発現する遺伝子に着目して解析を行ったところ、そのような遺伝子には、GAS7(Growth Arrest Specific 7)を含む樹状突起や神経の形成において重要な遺伝子が多いことがわかった。私たちの得た知見は、疾患関連部位・細胞で発現するアイソフォームの解析の重要性を示している。本セミナーでは、本研究の結果のみならず、実験・解析を実施する上で試行錯誤した点などについてもご紹介させていただきたい。